━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━          □■□ うつ病は、誰が治すのか □■□  ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━   心理職が多忙なのはあまり良い事ではないのですが、   毎日社会の断面を垣間見ているような、   時にはやるせない場面にも多々遭遇致します。   うつ病は一体、誰が治すのか   最近いろんな場面に出会うと、   ふっとこんな素朴な疑問が持ち上げてきます。   根本は、本人です。   そして、治療をして下さる医師、医療関係者、   それに加えてより回復が早いのは、   家族・職場・周囲の方々の理解と支援、   となります。   このとてもシンプルな当たり前の事に気づかない方や組織が多い、   という現実があります。   産業カウンセラーとして、個人や組織に対して、   相当な気遣いと配慮、支援をしていっても、   当の本人が本気で治そうと思わない。   当の組織が、自分達の組織のおかしさから目を避けようとしたり、   精一杯の助言を聞き入れない場合が多々あります。   そればかりか、逆に真実を歪んで受け取ったり、   こじれさせる場合すら見られます。   私自身その場合には、責任を遂行する事が不可能、   と判断をせざるを得ませんので、   どんなに懇願されても、契約の継続をお断りさせていただいております。      カウンセリングを行なうという事は、   労働科学研究所の鈴木安名先生によると、   感情労働を行なっている事だそうで、   自分のホンネの感情を抑える代わりに対価を頂いているという事だそうです。   自分の感情をコントロールして、顧客に満足感を与えるという事は、   相当な脳の疲労と消耗を発生させます。   我々カウンセラーは、相手の心に寄り添って共感すること、   が求められます。   資格取得の際に、徹底的にトレーニングしてきたことです。   この時発生する共感疲労は、同時に自分の心が傷ついたり、   過労状態になったりするリスクを同時に抱えている、という事でもあります。   自分の命を削ってカウンセリングをしている、という現場は毎日あります。   その中からどうしても   個人や組織に提示しなければならない事を進言しているのに、   全く聞く態度もなく、逆に非難を受けたのでは、   私自身が成り立たなくなってしまいます。   組織にとっては、耳が痛いことや傷口を露呈する場面も多々出てきますが、   今までにおいて、組織が見事に生まれ変わった所というのは、   そういう進言した内容を真摯に受けとめ、   本気で取り組み始めた組織だけです。   個人においては、こんな方もいらっしゃいました。   うつの症状が長く続いていた方でしたが、私が顧問になってからは、   ご自身が随分前向きになって、   いろんな工夫をしながら治療を続けて下さいました。   ある日私の所に来て、   「僕はがんばり過ぎちゃったから薬を飲むようになったので、    がんばり過ぎないようにこれを持ってるんだ」と見せてくれたのは、   必ず使用する家のカギにつけたマスコットでした。   「これを見る度に、がんばり過ぎないんだ、って思うんです」と。   彼はほどなく職場復帰をして、今では元の元気を取り戻しています。   面倒見の良い彼は、きっと懐の深い管理職になっていくと思います。   そんな社員の方を見ると、素直に真摯にご自身の病気を認知して、   付き合っていったかたの方が、回復もより確実な気がしています。   個人にしても組織全体にしても、病症を治そう!   という意志が無いところには、   治癒は絶対に来ない、と私は断言したい心境です。   これは精神疾患に限らない共通項だと痛感しています。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━