━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━       □■□ 激変する社会の中で □■□ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━        *季刊発行を越えて、半年が経ってしまいました。今年の臨床現場は今までにな  い位に凄まじく、連日のカウンセリング外来は途切れることが無く、国内全国区、  更に海外で働く日本人駐在員のケア等、フィールドも益々広がっています。メン  タルヘルスに関する多様な内容でのセミナー依頼や顧問契約先の増大と、ものす  ごい勢いで推移しております。激変している社会の真っ只中にいる実感を、毎日  肌で感じています。 *民間企業は株主総会が終わり、厳しい現況へ新たな舵取りが開始されましたが、  新年度に入り社会を映し出す多くの厳しい数値データが発表されました。 ◇3月・「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」が改訂。  心の健康問題により休業している労働者の増加や、職場復帰支援がスムーズに進  まないという調査結果もあり、復職に関する社会的関心が高まっているのを受け  手引きの改訂が行われた。2004/10月に公表された内容の基本的な考え方は継承  し、新たな経験や知見等を踏まえ、より詳細な内容が書き込まれた。 ◇4月・2008年の自殺者数は32,249人で3万人を超える状況は11年連続。  自殺者のうち男性は22,831人、女性は9,418人。月別では、米証券大  手リーマンブラザーズが破綻した9月から増加。都道府県別では、東京が最多、  大阪・神奈川・北海道・埼玉の順、18都道府県で前年より増加した。
 うつ病がきっかけとなった人が6,490人で、自殺の動機として2年連続で最  多となった。年代別では50代が最も多いが、30代・20代・19歳以下の順  で若者層が前年比で目立って増えた。    ・精神疾患による労災認定の判断基準を10年ぶりに見直し。  うつ病等の精神疾患や自殺についての労災認定をする際に用いる判断基準を、  10年ぶりに見直すことを決定。パワハラなどが認定できるように12項目の判  断基準が新設された。精神疾患による労災認定はストレスの強い順に3、2、1  の3段階で判断されるが、強度3で新設されたのは、「ひどい嫌がらせ、いじめ、  または暴行を受けた」という項目。これまで明確な基準がなかったパワハラによ  る精神疾患について、この新基準で判断できるようにした。 ◇6月・2008年の心の病で労災認定を受けた人が269人となり過去最多を更新。  職場でのストレスが原因でうつ病等の精神疾患になったとして、昨年労災認定を  受けた人が過去最多を更新した。年代別で最も多いのは、30代・20代・40  代の順で、20〜40代で全体の約8割を占めた。職種別では、専門的技術的職  業が最多で、生産工程労務作業者・事務の順となっている。労災申請者は、927人。    ・5月の主な経済指標は、有効求人倍率0,44倍、完全失業率5,2%。  雇用や消費など家計に関わる指標は以前厳しい状況が続いていることが示された。  雇用環境の悪化は、中小企業から大企業に広がっており、有効求人倍率と完全失  業率は過去最悪を更新した。 *公表された数字内容が、カウンセリング現場を持つ私には実感値としてわかり  ます。訪問する度に組織の状況は刻一刻と変化しており、国内8拠点を2拠点に  して工場閉鎖になるとか、早期退職優遇制度の説明をしているとか、週休3日が  未だ続行中、等々。  その厳しさに比例する社員達の壮絶な辛さ、どうあがいても先の見えない底知れ  ない不安感と閉塞感、誰にぶつけていいのかわからない憤り。今のカウンセリン  グ外来は社会に対するやるせない感情の吹き溜まりのような場面の時があります。 *そんなクライアントを前にして、私は何を支援できるのか。  産業カウンセラーとして、何を提供できるのか。毎日が襟を正す日々です。どん  な過酷な状況であれ、私は目の前にいる人の命を守っていきたい、と思います。  今の私に出来得ること全てをもって、真剣に対峙していきたい、と願っています。  その為に絶え間ない学び、即ち最新の医学学会情報や正しい知識の習得、労働安  全衛生法等々の法規や通達の動向察知、これが自身に課せられた条件と認識して  います。そして経営陣に言うべき事案があれば、第三者だからこそ言える内容を  現況のデータを基に進言し、一緒に改善のために尽力していきたいと思っていま  す。ひとりの本気は必ず人に伝わり人を動かし組織をも動かす、私自身のこの信  念は、今この社会の中で確信となっています。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━