━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■□■ 学会報告 ■□■ 第 22 回 日本産業精神保健学会 「新たな産業精神保健の展開へ向けて-医療との連携強化-」  2015/6/26・27 東京 in 学術総合センター ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━   ◇今月と来月のメルマガは、6月の日本産業精神保健学会と7月の日本うつ病学会総会    +日本認知療法学会に出席して、私が聴講した講演内容を申送り致します。     <表記:◎=抄録集全文 ○抄録集抜粋 ・=藤井メモ> *シンポジウム 「ストレスチェック制度における心理職の活用の意義と課題」          東邦大学医療センター佐倉病院産業精神保健職場復帰支援センター          精神科医・臨床心理士 ソフトバンク産業医  平 陽一 先生 ◎ストレスチェック制度では、その実施者は、医師・保健師、研修を受けた看護師・精神 保健福祉士の四資格となっており、心理職は入っていない。これまでストレスチェックを 既に実施している企業の中では心理職が中心となってきた職場もあり、心理職による社員 相談室を持っている企業も少なくない。またスクールカウンセラー制度では、臨床心理士 が教職員のメンタルヘルスケアを積極的に推進してきた実績もある。しかし、残念ながら 心理職は国家資格ではなく、守秘義務に関する法的な定めがないため、今回は見送られて いる。 では、今回のストレスチェック制度の中で、心理職はどのような役割をとり、どのような 活動を行っていくことができるのであろうか? 現状心理職が活躍している職場を例示しつつ、労働安全衛生法、労働安全衛生規則、スト レスチェック指針を紐解き、既存の心理職の役割を考えあわせつつ、今後の本制度下にお ける心理職の活用の意義と課題について検討する。 まずは、ストレスチェック制度の実施者であるが、これはストレスチェックそのものの実 施、結果通知、高ストレス者の選定、医師による面接指導の申出勧奨、集団的分析などの 全般の運営を行うものであり、これは実施資格者として、専属産業医や保健師が現実的に 職場全体の健康管理を行っている立場からすると適任かもしれない。むしろ月1回だけの 嘱託産業医の職場では、医師ではなく保健師が実施者となった方がよい場合もあろう。 また、面接指導が医師だけに特定されているのも、この面接指導とは就業区分判定であり 通常勤務・就業制限・要休業に関する意見書を発行する責任があることから産業医が行うこ とは尤もである。 さて、問題となるのは、この間のプロセスである。まず、高ストレス者の選定や対応、就 業区分判定に繋げる必要性の有無、その課題抽出や実際に対象者と面談してみて何が問題 であり、どのように解決を図るのか、そのプロセスこそが一人一人の労働者の状況や心理 状態を丁寧に検討していかねばらないポイントである。 その役割を担う者として、指針では「その他の医師、保健師若しくは精神保健福祉士又は 産業カウンセラー若しくは臨床心理士等の心理職が労働者に面談を行い・・」という記述 がある。このプロセスに関わる多職種は、実施事務従事者と位置づけられ、心理職には労 働安全衛生法 104 条の守秘義務が適応できる。 確かに、「心理的負荷」を正しく理解するためには、心理学や精神医学の知識は欠かせない。 産業医の多くは非精神科医であり、面接指導(就業区分判定)を実施する段階までの間に、 「心理的負荷」について適切に評価されていれば判断はより適切となる。 また、事業者への情報共有が前提の面談指導は受けたくないが、心理支援としての相談は 受けたい、面接指導の前に医療機関への受診を悩んでいる、といったニーズもあろう。 心理職の存在は、心理的負荷がもたらす様々な反応について、柔軟な対応がとれるという メリットがある。また、心理職にとって組織心理学的な集団的分析も得手であるというメ リットもある。心理職の存在は、ストレスチェック制度をより効果的に実施するために、 極めて重要であり、まだまだ数少ない精神科産業医との連携も加われば、より一層幅広い 活動が期待されるものである。   ・ハイリスク者(高ストレス者)は、全体の 3〜5%程度。 ・(就業区分判定の)意見書を発行する人は、全体の 0,1〜0,2%程度。 ・ストレスチェックだけやればいいということではない。目的ではなく、職場をより良く  するための手段としてどう活用していくかという視点が大切。 ・ストレスチェックをやっていても、自殺した人はいる。  亡くなった方はハイリスク者では無く、中程度のストレスチェック結果だった。  「いつもある」には○できない人達がいることを知っておくべきである。 *シンポジウム 「ストレスチェック制度における多職種連携 会社と産業医」          コマツ本社健康増進センター 精神科医  南 昌秀 先生 ○2006 年に「安全と健康」がすべてに優先するとの考え方に基づき、安全と健康に関す る社長メッセージを発信した。メンタルヘルス施策については以下のように取組んできた。 1,メンタルヘルスの EAP 制度導入(2005~) 2,職業性ストレス簡易調査を社員全員に実施 (2006~) 3,社員教育にメンタルヘルスの組込みと全員eラーニング=ストレス学習制度の 実施(2007~) 4,休職者の復職を支援するプログラムの制度化(2008~) 5,社員や家族がいつ でも相談できるコマツ健康相談ダイヤル制度の開始(2009~) 6,ストレスチェックの結果に 基づく職場環境改善活動の開始(2009~) ○ストレスチェックは当初は、社員自身の気づき・セルフケアと産業保健スタッフによる 高ストレス者へのケアが活用の主体であったが、2008 年より個人対応中心のメンタルヘル ス施策に加え、職場環境改善によるストレスの軽減と、メンタルヘルス不調予防策として 職場環境改善活動を全社的に展開した。職場毎の課題の決定・実践により、職場のコミュ ニケーション向上やストレスの低減につながり、会社全体としてより良い職場環境作りに 効果があると期待されている。 ・個人のストレスチェックは手加減しても、集団は生データが出てくる。  ので、1次予防として有用である。 ・ハイリスク者(高ストレス者)は、全体の 3〜5%程度 ・ストレス判定図結果で、リスクが高い 120以上の職場では「改善ミーティング」を実施  している。120以下でも「いきいき職場ミーティング」を実施している。                                       以上